電車が炎上するニュース番組を母と見て

テレビのニュース。電車が屋根の上を炎上しながら渋谷の街の近くを走ったらしい。繰り返される映像を私は母と見ていた。

母はふしぎそうにこう言った。「どうしてバックしないのかしら」。私は隣で夕食を食べながら答えた。「ほかの家に燃え移らないためじゃないの」。

実際にはそうではなかった。ニュース番組の続きが報道するところによると、どうも電車の警報機のシステムの問題で、電車を動かせないだけだったらしい。

乗客のインタビュー。車内では炎上していたことには気づかなかったらしい。ただすごく熱く感じて何事かとは思っていたそうだ。車内のアナウンスで「一列になって、奥に下がってください」と言うので、何事かと思いながらほかの乗客とぎゅうぎゅう詰めになっていたという。

私は言った。「怖いねえ。けど、熱いってだけで、燃えてることに気づかなかったなら、パニックにならなくってかえってよかったのかな」。

そのあとの映像の続きは、外からの視聴者提供の映像だった。男性が一生懸命逃げろ逃げろと吠えるように叫んでいる。車掌を含め、車内の人間は誰も気づいていないのだ。

「中にいる人たちはのんきねえ」と母親は言って、ビールを飲んでいた。たしかに。けど今回は大きな被害がなかったから、こうやって夕食のネタとしても母親としゃべれるんだなあ、と思って、ふだんよりもちょびっと安心したような夕食の食卓だった。